水質試験に使われる細菌について、その種類と使用される理由、飲料水の基準について記載しています
安全な水を安定的に供給することを目的とした法律に水道法1)がありますが、この水道法に基づく水質基準には46項目が設定されています。その中で健康に関する項目は29項目あり、重要な指標として一般細菌と大腸菌群が規定されています(表1参照)。
また、各国が飲料水の安全基準を策定する際の基礎資料として、世界保健機関が勧告したWHO飲料水水質ガイドライン(第2版)でも、表2に示すように一般細菌と大腸菌群及び大腸菌は必要不可欠な検査項目とされています。
表1.国内の飲料水規制項目
| 基準・規制 | 水質基準 |
| 水道法に基く水質基準 | 一般細菌 集落数が100個/ml以下であること。 大腸菌群 検出されないこと |
| ミネラルウォーター類を殺菌又は除菌せずに製造する場合の原料水の規制基準2) | 大腸菌群 陰性 腸球菌 〃 緑濃菌 〃 芽胞形成亜硫酸還元嫌気性菌 〃 細菌数 5個/ml以下 |
表2.海外の飲料水規制項目
| 基準・規制 | 水質基準 |
| WHOガイドライン(1993) | 大腸菌又は高温耐性大腸菌群 100ml中に検出されないこと。 大腸菌群 〃(検体数の5%まで許容) |
| US.EPA飲料水水質基準(MCL) | 大腸菌群 〃(検体数の5%まで許容) 従属栄養細菌 処理技術で規制 |
一般細菌検査の導入はRobert Koch3)の発案によるもので、一般細菌数が100/ml以下の状態ではコレラ患者の発生がないという事実に基づいたものです。標準寒天培地を用いて36±1℃で24±2時間培養したとき、培地に集落を形成するすべての細菌を指します。つまり、従属栄養細菌のうち、温血動物の体温前後で比較的短時間に集落を形成する細菌です。従って、分類学的に特定の菌または1つのグループを指したものではなく、また水中の生菌の総数を示すものでもありません。清涼な水には少なく、汚染された水ほど多い傾向があるため、水の汚染状況や飲料水の安全性を判定する上で有効な指標です。
水系感染症の主な原因菌が人を含む温血動物の糞便を由来することから、微生物的な安全性確保に関して大腸菌の検知は重要な意味があります。大腸菌は人や温血動物の腸管内に常在し、糞便由来でない細菌も含む大腸菌群と比べて糞便汚染の指標として信頼できます。また、単独な菌種ばかりでなく他の糞便指標細菌と比較すると、自然界では生存期間が短いため、糞便汚染指標としてより特異的であります。
大腸菌群とは「乳糖を分解して酸とガスを生じるもの」と定義としていることから、検水50mlを用いた推定試験に始まり、確定試験・完全試験を通して、ガスの発生有無が陰陽性(ガス発生→陽性)の判定基準となっています。
好気性グラム陰性菌で自然界に広く分布しており、生育に適した20℃以上の水が停滞あるいは循環する人工環境水には、レジオネラが効率的かつ高濃度に生育します。これまでに冷却塔水、循環式浴槽水(24時間風呂水を含む)、給湯設備、温泉水、加湿器水、水景施設等からレジオネラの検出が報告されており、在郷軍人病と呼ばれて劇症肺炎に似た症状を示し、これまでに多くの死者が発生しています。UVには大腸菌より弱く、UV照射はレジオネラ菌の有効な殺菌法です。
腸炎ビブリオによる人の疾病は急性胃腸炎で、夏季に発生する食中毒の大半を占め、長い間わが国の食中毒の最高位となっていました。この菌の特徴は好塩性で1〜8%の食塩含有培地でよく増殖します。約3%の食塩を含む海水が水温15℃を超えると、腸炎ビブリオの海産物への一次汚染が急速に進み、魚の腸内細菌のほとんどがこの菌で占められるといわれます。腸炎ビブリオ属にはコレラも含まれます。
腸炎ビブリオ菌はUVには大腸菌より少し強いが、枯草菌(芽胞)よりは弱く、UV処理は有効な殺菌法です。
枯草菌は胞子(芽胞)を形成する陽性の桿菌です。胞子は耐熱性が極めて強く、菌にとって不利な環境条件にもかなり抵抗性があり、また水や土壌中に存在して空中に飛散し自然界に広く分布し、食品・食物への混入機会が多いゆえに食品衛生上、食品保蔵上、常に問題になる菌群ですが、病原性はあまり高くありませんが、UVにはやや高い耐性を示します。
<注>
1.厚生省令第69号, 平成4年12月21日 (1992)
2.厚生省告示第111号,昭和61年5月31日(1982)
3.細菌学者・医学者:1882年に結核菌を1884年にコレラ菌を発見。
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