快適で安全なプール・温泉水 シリーズ1
循環利用する温泉プールのレジオネラ菌や大腸菌浄化に大量に
塩素を使った場合の弊害の発生メカニズムを詳しく説明しています
人々はプールや温泉に健康増進の役割だけでなく、快適さと心身のリフレッシュを求めています。安全で快適なプールライフや温泉を楽しむためには、水は透明で水質が良く安全でなければなりません。
これまでのプール水や温泉は、塩素と濾過によって浄化されてきました。この旧来の塩素に頼る方法では水、を循環利用する室内温水プールや温泉水は十分に浄化されず安全も守れません。消毒の為に水に加えた塩素は水中の汗や尿のような汚染物と化合して、有機塩素化合物や窒素化合物になり、循環する間に蓄積します。窒素化合物や有機塩素系ガスは目や鼻を刺激し、建造物の老朽化を早めます。特に有機塩素化合物のトリハロメタンは発ガン性があり、非常に危険です。最近はダイオキシン類の環境ホルモンまで現れてきましたが、これも塩素によって作られる化合物です。
一方不快感を与えないように塩素濃度を下げると塩素の殺菌力が低下し、大腸菌はおろか劇症肺炎を引き起こすレジオネラ菌も殺せなくなります。最近は温泉や空調機を経由してレジオネラ菌による死者が出ていることも良く知られています。
温水プールと温泉の条件は多くの点で共通しています。しかし単位容量当たりの遊泳者数が多く、補給水量の少ない温水プールの方が事情は厳しい。塩素処理で汚染が蓄積するプール水や温泉水は、下記のような障害を生じます。
1) 目に刺激、悪臭、健康に有害な空気が発生
2) 錆や腐食によって建造物の老朽化を加速
3) 髪の毛や水着の脱色・変色
4) 発ガン性化合物の生成
5) レジオネラ菌・ウイルス性疾患の伝染
6) 低い透明度と汚染による不快感
7) 多い補給水による高いランニングコスト
1)から4)は消毒の為に加えた塩素と水中の化合物が反応して新たに生成した塩素系化合物による障害です。5)6)は塩素の不充分な殺菌力に起因する弊害で、7)は総合的な経済損失です。現在、プールや温泉の水は厚生労働省その他機関の規制により、塩素による滅菌処理と濾過による浄化が求められています。機関により規制値が異なりますが、代表的規制値の遊離残留塩素濃度0.4PPM以上、又は総残留塩素量1.0PPMですが、遊泳者数の変動に伴いその濃度も大きく変動するので、安全を維持するのは困難です。これまでの温泉における感染例も一次的に入浴者が増えて塩素濃度が下がった時に起こったと疑われています。しかし安全を見込んで塩素濃度を高くすると、入浴が快適どころではなくなります。
遊泳者の体から出る汗・尿・皮脂・唾液のような溶解性有機化合物や窒素化合物は、通常の濾過では除去できません。これらの汚濁物は、塩素と反応して塩素化し悪臭を発し目に刺激を与える物質(クロラミン・トリハロメタン等)となり、遊泳環境を著しく悪化させます。これらの有害な塩素化合物は水中だけでなく、プール室内の空気中にも相当量が発生しており、遊泳者の健康を損ねています。刺激性物質のクロラミン類は、式(1)〜(5)のような反応過程で塩化水素ガスを発生させ、それが水に溶解して塩酸となります。
NH3+ HOCl → NH2Cl(クロラミン)+H2O ・・・・・・・・・・・・・(1)
R-NH2+ HOCl → R-NHCl+H2O・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
NH2Cl+ HOCl → NHCl2+H2O・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
2NH2Cl+HOCl → N2+3HCl(塩素)+H2O・・・・・・・・・・・・・・・(4)
R-NH2+ HOCl → R-N + HCl +H2O・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5)
式(4)、(5)で発生した塩酸ガス(HCl)ガスは、プールの天井や壁面の塗装と下地のコンクリートの間に入り込み、蒸発した水蒸気に溶解し塩酸となって塗装を剥離させ、コンクリート面を荒らします。このことはプールの施設管理者は数多く経験しており、頭の痛い問題となっています。
プール水や風呂の水の透明度を悪くする原因には、意外にもバクテリアの繁殖が大きな比重を占めています。塩素だけに頼る殺菌では雑菌が繁殖します。増殖したバクテリアもいずれ死亡しますが、換水率の悪いプールや温泉では、このバクテリアの死骸が蓄積して、水の透明度を悪くします。
トリハロメタン(THM)は有機化合物とハロゲン(F2、Cl2、Br2、I2)の化合物の総称で、自然界にもわずかには存在します。しかし表1のデーターによると、プールで発見されるTHMはほとんど塩素系のものです。プール水には消毒のために多量の塩素が注入されているので、これと有機性汚濁物が反応して塩素系THMができたのです。温泉や風呂も条件は同じです。水は間違って飲んでも量はわずかですが、空気が体内に入るのを避けることはできません。対照のTHM量は水道水と市街地大気におけるものです。これによるとプール室内のTHM濃度は、大気中の50〜100倍と言う恐ろしい値になっています。これではせっかく健康とリラックスを求めてプールや温泉に行って、逆に目を痛め健康を害することになりかねません。
表1.各プールの水中と室内空気中のTHM量(ppb)
| プール名 | A | B | C | D | E | F | 対照 | ||
| プール水 | CHCl3 | 97 | 91 | 59 | 47 | 70 | 127 | 31 | 42 |
| CHCL2Br | N.D | 1 | N.D | N.D | N.D | N.D | 8 | 14 | |
| CHClBr2 | N.D | 2 | N.D | N.D | N.D | N.D | 3 | N.D | |
| CHBr3 | N.D | N.D | N.D | N.D | N.D | N.D | N.D | N.D | |
| 室内空気 | CHCl3 | 68.4 | 60.6 | 70.0 | 17.7 | 72.2 | 69.3 | 0.31 | |
| CHCl2Br | 0.83 | 0.94 | 1.79 | 0.27 | 1.82 | 0.47 | 0.002 | ||
NOTE) ND:CHCl2Br<1 CHClBr2<2 CHBr3<10