UVオゾン表面処理技術

1.はじめに 2.UVオゾン表面処理法のメカニズム 3.UVとオゾン 4.表面処理装置の概要 5.実施例

1. はじめに

 固体表面の接着力や親水性を高める処理法には、無水クロム酸や硫酸などの劇薬を用いる湿式プロセスから電子やイオンを用いるドライプロセスまで多くの工法がある。その中で紫外線(UV)を用いる光表面処理はドライプロセスで大気中で処理ができ、UV改質UV洗浄の二つの効果を併せ持ち、対象製品にあたえるダメージが小さい新時代の技術と注目されている。
 UVオゾン法の改質は、表面の接着力を化学的に向上させ、洗浄は表面の接着力を阻害する有機化合物汚染層を除去して間接的に接着力を向上させ、共に品質の安定と歩留まりを高める効果がある。
 UV法は50年以上も前から研究はされている技術だが、長年工業的には実用性がないと見なされて来た。事実、実施例も少なかった。
 しかし1980年代前半に、液晶表示素子の高密度微細化の進展に伴い、ダメージが小さい技術として液晶用ガラスの洗浄に採用され、現在では液晶製品を作る上で欠かせない標準的技術に育っている。
 改質技術はそれより少し遅れて1990年代前半に実用化が始まり、乗用車のマッドガードの塗装前処理(図1)や磁気浮上リニアーモーターカーの軌道コイル成形体塗装前処理(図2)に採用され、軌道コイルは今も甲府の実験線で活躍している。
その他には乗用車エンジンデバイスや電子機器のエンジニアリングプラスチックの接着力向上などに採用されている。
しかし洗浄分野では液晶表示素子という日本発の稀有な製品に巡り会い順調に普及が進んだが、改質分野の方は工法の使用者が製品の製法を企業秘密として囲い込むことが多く、そのため普及が阻まれてきた。

図1.乗用車マッドガードのUV照射
   によ る塗装前処理。UV光源は
   両側にあり、その間を泥除け成
   形体が通る。

図2.磁気浮上超高速列車の軌道
   コイルコアの塗装前処理実験
   機。

図3.実験機内部と軌道コイル


 光技術は加工精度がミリオーダーの時代には無力であったが、マイクロメートルの時代になってようやく有用な技術と認められた。
 更に微細化が進みナノメートルの時代を迎え、製品の高密度・高速化した最近、多層プリント電子回路(PCB)やフレキシブルプリント配線板(FPC)のフィルム基板の処理や高機能MEMSの製造工程の主要な技術に採用が進んでいる。

表1.UVの波長領域と区分
 

X線

UV( 紫外放射)

可視光

赤外線

UV-C

UV-B

UV-A

λ(nm)

        100             280        315        400        780

Eergy

 

(kJ/mol)

       1196             427        380        299        153

(eV)

       12.4              4.4         3.9         3.1        1.6

2.UVオゾン表面処理法のメカニズム

2-1.UV改質

2-1-1. 分子結合とUVエネルギー

 UVオゾン表面処理法ができることは、固体表面の改質と洗浄である。どちらの反応が起こるかは素材に依存し、ガラスやセラミックには洗浄作用が働き、プラスチックや金属には改質と洗浄の両方が働く。
 UV光の照射をうけ有機化合物がそのエネルギーを吸収すると、光エネルギーより弱い分子結合は結合が切れる可能性が生じる。
 表1によると光のエネルギーは波長が短いほど高い。表2の有機物の分子結合エネルギーと表3のランプのエネルギーを比較すると、有機物の結合エネルギーにはランプのUV光と同等か低いものが多い。例えば低圧水銀ランプの185nmやエキシマランプの172nm線のエネルギーは、C-H結合はもちろんC-F結合より高い。

表2.分子の結合解離エネルギ− (単位:kJ/mol)

結合

分子(AB)

分子(A;B)

結合エネルギ-

H-H

H2

2H

432.07

H-C

C6H6

H, CHO

464

CH4

H, CH3

431.8

CH3

H, CH2

457

CH

H, C

334.7

O-C

CO2

CO, O

526.1

CH3OH

CH3, OH

378.1

N-N

N2

2N

941.6

O-O

O2

2O

493.6

O2+

O, O+

642.8

O3

O, O2

102

C-F

CH3F

CH3, F

472

C6H5F

C6H5, F

524

H-O

H2O

2H, O

[458.9]

H2O

H, OH

493.4

OH

O, H

424.4

                                                                1993化学便覧より抜粋

表3.低圧水銀ランプとエキシマランプの主要波長とそのエネルギー

 

低圧水銀ランプ

Xeエキシマランプ

高圧水銀ランプ

発光波長(nm)

185

254

172

365 etc

エネルギー

(kJ/mol)

647

472

696

328

(eV)

6.7

4.9

7.2

3.4

大気中の有効照射距離(mm)

0−20

0−3

大気中の臨界照射距離(mm)

200

8

2-1-2. 富酸素ラジカル

 UV照射によりC-H分子が切れると、水素原子は軽いため容易にそこから引き抜かれる。その後に酸素原子が結合すると、酸素に富む官能基が形成される。
 表面における化学反応は、X線光電分光(XPS)やIRスペクトルなどで分析出来る。
 図4は液晶ポリマー(LCP)の表面を200Wの低圧水銀ランプで3分間照射した時のC1SXPSスペクトルである。
 UV照射により富酸素官能基のカルボニル基などに起因するピークが新たに発現しており、特にカルボニル基が多く導入されている。
富酸素ラジカルには極性があり、表面エネルギーを大きくし親水性を高くする。

図4.UVオゾン処理したLCPのXPSスペクトル,C1S

2-1-3. ぬれ指数と接着力

 図5は大気中でエンジニアリングプラスチックのPBTとPPSに200Wの低圧水銀ランプを照射した時の表面エネルギーの変化である。表面エネルギーの評価は、JISのぬれ試薬を用い、ぬれ指数で求めた。因みに純水の値は72(at 25℃)である。
照射時間を長くして露光量が増えるに伴なって「ぬれ指数」は始めは急激に、後は緩やかに増加している。
図6に同じPPSとPBTを、二液エポキシ系接着剤で接着した時の接着強度の変化を示した。
接着強度もねれ指数と同様に露光量が増えるに伴って強くなっているが、接着強度はある露光量のところでピークを迎え、それを越えると反対に低下している。これはデータの誤りではなく、接着力向上には接着剤が被着体によくぬれる事も必要なことを示している。
接着剤にも固有の表面張力があって、被着体と接着剤の表面張力が等しい時、正しくは極性成分と非極性成分が共に等しく界面張力がゼロになる時、最大の接着力が得られる。

図5.表面ぬれ指数とUV照射の関係

図6.接着強度とUV照射の関係

 このことは意外と知られておらず、製造現場の工程で安全を求めて過剰に処理をして、逆に接着力を低下させて慌てることが時にある。
 富酸素ラジカルは硫酸などの薬液による表面処理でも生成される表面改質の基本の酸化反応である。
しかし無水クロム酸などによる処理は、プラスチック表面を腐食させ数ミクロン単位のクレーターを表面に生成する。このクレーターはアンカー効果を示し接着力を強くする。しかし最近の高密度回路パターンをプラスチック上に形成する場合のように、ラインスペース寸法(L/Sサイズ)が10μmを下回るサイズになると、粗面は接着を妨げ、金属の根残りなどの弊害を起こす。
一方UVオゾン法は表面に腐食は起こさず、平滑な面を保ったまま接着力を向上させる。この表面腐食を起こさない特性が、高密度製品の処理に歓迎される一番の所以である。
 UVオゾン法の改質効果は万能ではなく、素材によって効果が大きく異なる。データーはまだ多くないが、これまでに得られた素材による改質効果の差、即ち改質トレンドを参考までに表4に示す。
この表のデータを充実させることが、この技術の普及を促進させるための課題のひとつと考えている。表によればエンジニアリングプラスチックスの多くに高い効果があることが分かる。アルミ、ステンレススチール、金などの金属にも効果があり、数は少ないが実施例もある。
C-F結合は低圧水銀ランプのUV光でも分解できるのにフッ素樹脂が改質できないのは、フッ素原子は重いので解離されても水素原子のように直ぐには引き抜かれず、間もなく再結合するからと考えられている。
 単純なUVオゾン法で改質されない素材も、光増感剤を併用すると改質が促進されることがある。
例えばポリプロピレンや低密度ポリエチレンはUVとオゾンだけでは改質効果がないが、有機塩素系溶剤を含浸させてUVを照射すると、接着力が著しく向上する。この技術が製品科学研究所(現・産総研)から発表された時は、ポリプロプレン樹脂メーカーは期待に沸いたものであるが、間もなく有機塩素系溶剤の使用が禁止されたため、この技術は日の目を見なかった。
当社でも1990年代初めに図1の乗用車マッドガードの塗装前処理装置を作ったのが、唯一の例で終わった。
それから10年以上が過ぎた最近になって、高密度化製品に対応できる新しい光増感技術の研究がリバイバルしている。最新技術動向については、第5章で簡単に触れる。

表4. UVオゾン法の改質効果トレンド表(R4)

素材

臨界
表面張力
(dyne/cm)

改質
効果

備考

PPS フォートロン6165A4(GF)

 

○⇒◎

実績:乗用車エンジン部材

PBT VALOX 310-SEO-1001

47

△⇒◎

実績:乗用車エンジン部材

ナイロン6.6

46

△⇒◎

 

ナイロン46    TS-200F6

46

△⇒◎

 

PET FR-PET C9093

43

△⇒◎

 

LCP XYDAR 6330(GF)

 

○⇒◎

UVオゾン法、光増感法いずれも可
光増感:積層PCB基板のフィルム

ポリアミド12

 

△⇒○

ダイアミドL-1930

△⇒◎

ダイアミドL-1940

PEEK VICTREX PEEK 450G

 

△⇒○

 

ポリサルホンUDEL P-1700

37

△⇒◎

GF-130NT(GF)も同じ

ポリエーテルイミド

 

○⇒◎

ULTEM 2300-1000

変性PPO NORYL SEIJ-701

 

△⇒○

 

ポリイミド

45

FPCのフィルム基板

単純UVオゾン法と水膜法

ポリスチレン

33-36

実績・観賞用水槽

フッ素樹脂

18-21

 

ポリアセタール   ジュラコン

36

 

PP(ホモ)

27-29

光増感剤併用、実績・乗用車部材

単純UVオゾン法

PP(混合)

 

実績・乗用車デバイスetc

PE

31-32

 

加硫ゴム

 

実績・単車ブレーキシューetc

エポキシ系樹脂(GF)

 

実績・Maglev train coil成形体塗装

アルミ

 

実績・フィルムコンデンサー

ステンレス

 

実績・エレベータ構造体の接着

 

 

@:記号◎○△の部分

A:記号☆★の部分

   元・長瀬チバ社技術資料:アラルダイト系

  セン特殊光源の実績より

   接着剤によるエンプラの接着,910.610より引用

☆:効果あり、実績あり

◎:非常に強い接着強さ(材質破壊を含む)、

★:効果なし

   >100Akg/cm2, >85Ckg/cm2)

○:高い接着強さ70A〜100Akg/cm2 , 45C 〜85Ckg/cm2

△:低い接着強さ(20A〜60Akg/cm2

   接着剤:エポキシ系AV138/HV998

   A:界面破壊C:凝集破壊

2-2.UV洗浄

2-2-1. UV洗浄の概要

 処理対象の高分子化合物の量が少なく薄い膜状に分散している時は、UVオゾンによる酸化反応は容易に内部まで進み、終にはCO2、H2O、O2、N2その他の分子にまで分解される。それが気体となって表面から飛散して消える現象が、洗浄効果である。したがってUVオゾンで除去できるのは油性の汚染で、無機性のホコリの類には効果がない。微細なホコリも取れるとの発表はあるが、今のところ応用例は少なく高価(8千万円?)でもある。洗浄も間接的に接着力を改善し、品質を安定させることで歩留まりを高める。収益を高めるためには重要な技術であるが、この稿では簡単に紹介するに止め、詳細は他資料に譲る。

表5.洗浄法の接触角による能力比較

処理条件

接触角(度)

無処理のガラス板

26

洗剤⇒市水⇒炭化水素系溶剤

39

洗剤⇒市水⇒純水

17

洗剤⇒市水⇒IPA

13

オゾン水

<10

洗剤⇒市水⇒プラズマ

5

洗剤⇒市水⇒UVオゾン

4

プラズマ処理条件:200W, 1torr, 5sec, 13.56MHz

UVオゾン洗浄:200W低圧水銀ランプ, 大気中, 30sec

2-2-2. UV洗浄の特徴

 表5はガラス板を用いて色々な洗浄効果を比較したものである。評価は水滴の接触角で行った。因みにガラスの臨界接触角は3−4度である。
UV洗浄の特長は、湿式洗浄法に比べ高い清浄度が得られることであり、プラズマ法と同等の能力があるので、仕上洗浄として使われる。その代わりに大きな汚れには弱い。UVオゾン洗浄を巧く生かすには、大きな汚れは他の洗浄法で前もって除いておくことが大切である。炭化水素系溶剤の洗浄力は強いが、表5では逆に接触角が大きくなっている。
これは溶剤が表面に残留していることを示しているので、高度な精密洗浄においては水で十分にリンスすることが重要であることを示唆している。
 洗浄度の高いUV洗浄は、基本的には仕上げ洗浄に使われるものであるが、最近は発想を逆転させた工程として、図7のように超純水のリンス前にUV洗浄を加えることも行われている。湿式洗浄では完全には油性の汚染膜は除去できない。そのために微量のホコリは油膜に粘着して、リンスでは取れずに残る。図に示すようにその弊害をUV洗浄が除き、リンスの効果を高めホコリを極限まで減らす効果を示す。

図7.洗浄プロセスの模式図

3.UVとオゾン

3-1. UV露光量とUV照度

 UVや可視光は電磁波であり、波動特性を持ち波長をλ、単位時間の振動数をνとすると光の伝播速度は@式で示される。
          C=λν -------------------------------------------------------------------- @
一方アインシュタインの光量子論によれば光は粒子特性を示し、量子のエネルギー値は、hをプランクの定数とするとA式のように示される。
          E=hν ----------------------------------------------------------------------- A
          ここで、h=6.6260755×10-34J・s
@式とA式からB式が導かれ、この式から光のエネルギーは波長が短いほど高い事が分かる。
          E=hC/λ---------------------------------------------------------------------- B
表1の各波長のエネルギーの値はB式から求められる。
 UVは可視光より波長が短く、現在は表1に示されるように100nm から400nmまでの光と定義され、主要な作用に応じて三つの領域に区分されている。
低圧水銀ランプは185nm線と254nm線の二波長、キセノンエキシマランプは172nm線が主波長である。UVオゾン法を使うときは、主波長の露光量と照度の値を知って数値管理する。
UV露光量は与えられた時間に表面のある点に入射した単位面積当りの放射エネルギーで、単位はJ/m2で表される。UV照度は表面のある点に入射した単位面積当りのUV放射束を面積で割ったもので、単位はW/m2で表される。UV露光量とUV照度との間には、C式の関係が成立する。
          UV露光量=UV照度×時間(sec)--------------------------------------- C
 UV照度やUV露光量の単位は、現場ではmW/cm2やmJ/cm2で現されることが多い。
最近は三波長とも専用の照度計と光量計が市販されているので、管理は行いやすくなった。
UVの測定で注意を要するのは、紫外線領域には電球のような信頼のおける標準光源がないため、UV照度計や光量計の確度は非常に悪いことである。
測定器の製造業者が異なる計器の間では、値が二倍以上異なることも珍しくない。
したがって、UV照度やUV露光量の測定値を比較する場合には、用いた計器の製造業者を確認して、他製品の値と換算値で修正して比較する必要がある。ただし換算表は自分で作るしかない。

3-2. UVが作るオゾン

 工業的にはオゾンは空気又は酸素ガスに数千ボルト以上の高電圧を印加して、無声放電を起こして作る。しかし表2の酸素分子の結合エネルギーから計算すると、波長が240nm以下の光も酸素を分解する。したがって、低圧水銀ランプの185nm線とエキシマランプの172nm線はオゾンを作れる。実際にUVは以下に示す各式の反応を経てオゾンを生成し、254nm線は活性酸素の生成を促進する能力がある。以下の式においてhνは光を、括弧内の数値は波長を現す。(3P)は基底状態の原子、(1D)は励起状態の原子を示す。
 DEF式は低圧水銀ランプによるオゾンと活性酸素生成プロセス、G式はエキシマランプの反応プロセス、H式はオゾンの自己崩壊の式である。
          <低圧水銀ランプによるプロセス>
                O2+hν(185nm) → O(3P)+O(3P) ------------------------------------------------ D
                O2+O(3P)+M → O3 -----------------------------------------------------------E
                O3+hν(254nm) → O2+O(1D) ---------------------------------------------------F
          <Xe・エキシマランプによるプロセス>
                O2+hν(172nm) → O(1D)+O(3P) ------------------------------------------------ G
          <オゾンの自己分解>
                O3 → O2+ O(3P) ------------------------------------------------------------- H
 Mは生成直後の振動オゾンを緩和する酸素、窒素等の分子を示す。オゾンが自己崩壊するときに放出する酸素原子は基底状態にあり、エネルギー準位は低い。しかも乾燥した大気中におけるオゾンの半減期は十数時間と長いので、オゾン単独の化学反応は弱い。
オゾンは熱や光によっても分解が促進される。一例としてオゾンには波長が200−300nmの間に、Hartley bandと呼ばれる強いUV吸収帯があり、F式に示すような反応を通して、短時間で活性酸素原子を放出させる。一方のエキシマランプは酸素を分解した時に、直接活性酸素原子を生成する。
 ガス体のオゾン濃度の単位は表6に示すように3種類もある。この他に水中のオゾン濃度もあり、使われる単位はmg/Lとppmで共通しているが、母体の水と空気の重さが違うため数値が変わるので、注意を要する。水中の濃度は、mg/Lとppm単位とも数値は同じである。

表6.大気中のオゾン濃度の単位による換算表

mg/L

ppm(vol)

ppm(weight)

1.00

510

843

0.196×10-2

1.0

1.65

4. 表面処理装置の概要

4-1. 表面処理装置と光源

 UVオゾン表面処理装置は短波長UV光源を主要デバイスとして構成される。現在は低圧水銀ランプとキセノン・エキシマランプが使われているが、将来はエキシマレーザーの実用化も期待されてる。Xeエキシマランプはエキシマレーザーから派生したもので、レーザー発振はしていない。表面改質や洗浄ではオゾン濃度は100-300ppmと低くても効果があるので、オゾン発生源にも同じランプが使われる。例外的に高濃度のオゾンを必要とするフォトレジストのアッシング(灰化)には、オゾン源として無声放電が使われる。
 装置の一例として図8, 9, 10に、光源に低圧水銀ランプを用いた枚葉処理の両面処理装置の写真を示す。

図8.枚葉式卓上型表面処理装置
   の外観

図9.光源は上下両面にあり、両面
   から照射できる。
   試料台は引出型で中央にある。

図10.下側のランプ
    を取出したと
    ころ。

この装置の試料台は引出式で実験や少量生産に向いている。量産機の場合はベルトコンベアーかローラーコンベアーが多い。図11はステンレスメッシュのベルトコンベアーの搬送タイプである。
 低圧水銀ランプとキセノン・エキシマランプの主要波長とそのエネルギーを表3に示したが、Xeエキシマランプの172nm線は酸素に強く吸収され、大気中の透過距離が短く、有効照射距離は0-3mmと極端に短いため、立体的な製品への適用は難しい。低圧水銀ランプの有効照射距離は0-20mmとゆとりがある。
 両者の能力差はあまりないので、UVオゾン法の改質には低圧水銀ランプがもっぱら使われている。

4-2. 排オゾン処理

オゾンは人体に有害なので、排オゾンは何らかの処理がいる。図12のような簡単なものから触媒で分解するものまで多くの方法がある。

図11.サスメッシュコンベアー
    式UVオゾン表面処理
    装置

図12. 専用排気口からダクトを経由して排気する方法

5. 実施例

5-1. 多層フィルム基板への応用

5-1-1. 液晶ポリマー基板の実施例

 携帯電話やノートパソコンなどの電子製品は、表示素子や音声等の機能部分とIC素子を載せたPCBの頭脳とそれらをつなぐフレキシブルケーブル(FPC)で構成されている。実装システムにおいてPCBやFPCは、無電解メッキなどの湿式プロセスによって銅回路パターンを形成できることは、コストパーフォーマンスの面から強く望まれる。
 高密度化が進みL/Sスペースが10μmオーダーを切ると、腐食で出来る粗面上のパターン形成は不可能になるので、基板表面を粗化しないUVオゾン法が注目される。
 PIとLCPはフィルム基板の素材として優れた特性を示すので、高密度実装基板には多用されている。一例にLCPフィルムをUV増感法で改質して、フレキシブル多層プリント回路基板開発に成功した実施例を紹介する。図13に装置外観を示す。LCPは単純なUVオゾン法でも改質が可能であるが。光増感剤を通してUVを照射して重合性ビニルモノマーをグラフト重合させると、一層効果的に改質される。

図13.光増感型枚葉式基板フィルム処理機
    手前でフィルム装填、奥で照射する。

引用した特許ではLCPフィルムにヒドラジン水溶液を塗布して、その上から200Wの低圧水銀ランプを120秒照射した実施例と対照の窒素アンモニアガス雰囲気におけるプラズマ処理、その他に比較として単純UVオゾン法と酸素雰囲気プラズマ処理の改質結果を示している。その結果を表7と図14に示す。銅箔の接着力改質にはいずれの方法も同等の効果があり、単純UVオゾン法でも高い効果があった。
無電解メッキ接着とスパッタリング接着では、UV増感法は単純UVオゾンの5倍以上、封止成型樹脂接着では約1.8倍の改質効果を示した

表7.LCPフィルムの改質効果の比較データ

処理法

窒素
比率
(%)

窒素
原子

形態

銅箔
接着
強度
(N/cm)

無電解
メッキ接
着強度
(N/cm)

スパッタ
リング銅
接着強度
(N/cm)

封止樹脂
接着強度
(MPa)

実施例1

3

N-C

8.04

6.96

6.57

18.2

実施例2

4

N-C

7.94

6.86

6.66

17.9

比較例1

1

N-C

7.35

1.37

1.13

10.1

比較例2

1

N-C

7.45

1.76

1.47

6.8

未処理

0

2.06

測定不能

測定不能

測定不能

フィルム処理法
    実施例1:UV増感法(ヒドラジン溶液+UV照射
    実施例2:アンモニアガス+プラズマ法
    比較例1:UVオゾン法



図14.LCPフィルムの改質効果の比較データ/グラフ


 UVオゾン処理とプラズマ処理の能力には、一般に考えられているような差がなく、ほぼ同等の改質効果を示している。

5-1-2. FPC用PIフィルムの実施例

 銅張PIフィルムがフレキシブルPCB、FPC、TAB、COFなどの基材に使われている。銅張ポリイミド基材は一例としてフィルム表面にNiやCrをスパッタリングで下地を形成し、その上に無電解メッキと電気メッキを行う方法や銅箔に接着剤又は無接着剤でラミネートする方法で作られる。PIの密着強度は、基本的には表面を無水クロム酸や硫酸の混合液で粗面化して得られるアンカー効果と酸化反応で得られる表面の富酸素ラジカルの極性力との合成力に依存している。しかしフィルムの改質にはスピードが求められるため、今はコロナ放電処理が主流になっている。

図15.ロールtoロール搬送式フィルム
    表面改質機。右中央のチェー
    ン上が光源

図16.光源の拡大写
    真。ランプは上
    下両面にある。

コロナ放電は数秒の処理で必要な接着力が得られることが最大の特徴である。コロナ処理によって起こる表面改質は酸化反応による官能基の生成であるが、コロナは大気中で高圧放電させるので、雷の一種の放電ストリーク束で形成されている。
コロナが照射されているフィルム表面を拡大観察すると、細かいストリークの輝点が均等に広がっていることからもその事が分かる。UV照射とは異なり、一本一本の放電ストリークはフィルム面に熱的衝撃を与えるので、表面は細かく溶融して粗面化する。この粗面が高密度回路に適用するフィルム基板の場合は、大きな障害になる。
一方、UVオゾン法はコロナ法に比べ処理に10倍程度の時間を要するが、光化学反応で官能基を作るだけで、処理面は平滑で高密度化高速化に適する。そのため2004年頃からようやく実用化が始まった。フィルムの搬送法は枚葉式やローラー搬送など色々のタイプが開発されている(図15,16)。

5-1-3. 高密度PCB電解メッキ前処理

PCBも微細化が進むと絶縁膜と配線の間隔が微細になり、メッキ液が絶縁膜に囲まれた銅のファインパターンにぬれ難くなる。UVオゾン処理は銅の平滑面を荒らさずぬれ性を高め親水化させるので、電気メッキの歩留まりを
上げることが認められた。この技術も2004年頃からの実用化が始まった新しい用途である(図17)。

5-1-4. チップ実装パッケージ

チップの実装パッケージのクラックを防ぐUVオゾン法によるパッケージング前処理装置は、1996年にはじめて市場に出たが、これまでの普及は鈍かった。しかしプラズマ処理装置に比べ安価で、高密度・高速化チップのダメージが少ないことが知られ、最近になって需要が増えはじめている(図18)。
今後はIC実装パッケージシステムに止まらず、機能デバイス併せ持つMEMSの製造工程での採用も期待されている。

図17.微細PCB電解メッキ前処理
    全景

図18.チップ実装パッケージ改質
    装置

5 -2. その他の製品への応用

 表面改質技術はハイテク製品だけでなく、一般の工業製品の生産にも役に立っている。
その一例にローテクと言われるプラスチック製観賞用水槽のUVオゾン接着前処理装置(図20)がある。
 この装置はそれまでのプライマー塗装をなくし、作業環境の改善と量産化促進に寄与した。
水槽の平板とフレームは強化ポリスチレンで、シリコンシーラントを用いて接着している。

図20.プラスチック観賞用水槽の接着力向上のためのUV
    改質装置。

図21.PS板とシリコーンシール剤の接着
    強度とUV照射の関係。

図21に強化ポリスチレン板をUVオゾン処理した時の、接着強度のデータを示す。図6で説明した被着体と接着剤の間に、改質に最適表面エネルギーの関係があることがここにも現れている。この予備実験の結果を参考にして、図20の装置が作られた。
 UVオゾン法の市場統計はまだないが、洗浄の用途が最も普及していて表面処理全体の80%を超えていると推定される。洗浄の中でも液晶素子の製造プロセスにおけるものが80%以上で、全く筆者の個人的推計ではあるが200億円には達しているとみている。
半導体露光原板、光学レンズ・プリズム、水晶振動子やIC素子リードフレームなどの洗浄が液晶に次いでいる。最近は液晶やプラズマテレビの接続端子までUVオゾンで洗浄されている。
 金額的には洗浄が圧倒的に多いが、用途例の品種は逆に改質が多い。自動車の車体や特にエンジン周辺のエンジニアリングプラスチックの改質例の評価が高い。しかし製品メーカーは製法を秘密にするので、それに囲い込まれて折角の用途例が知られずに終わっており、洗浄のような水平展開の障害になっている。

図22.水晶振動子やCD読取レンズの
   洗浄装置。

図23.手前のトレーに製品を並べ、
   奥の光源(開いている)の下に
   送って照射する。

図24.プラズマテレビ端子洗浄装置
    の光源。ディスプレイの周辺
    だけを照射する。

図25. フレキシブルPCB基板フィルム
    の改質


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