UVオゾン法による高機能フィルム基板の表面改質

多層フィルム電子回路基板・フレキシブル回路ケーブル etc

1. はじめに

ハイテク電子製品に使われる素材は一般に接着が困難で、機能性が高い高分子材ほどその傾向は強い。
そのため何らかの対策を求められる。接着性向上技術は現在では十指を超える表面改質技術が利用できる。
表面改質による接着力向上は、主に二つの効果に依存する。
一つは被着体表面を機械的または腐食により粗面化して、アンカー効果により接着力を得るもの。
 サンドブラスト法やクロム酸混液処理が良く知られている。
他方は化学反応により電気的極性を持つ官能基を表面に形成して、親水性と接着力を高めるもので、代表的なものにコロナ放電やプラズマ法がある。
 クロム酸混液処理やコロナ放電法のように、両方の効果を併せ持つものもある。
UV光の照射による表面改質技術は、大気中で使えるドライプロセスで、接着力向上は100%官能基の効果に依存する。
表面にダメージを与えない上に、高度な洗浄効果も併せ持つので、高機能製品の処理に適する新しい技術である
(製品写真1, 2を参照、ランプは低圧水銀ランプ)。
写真1.ローラー搬送UVオゾン改質装置。
ランプの数は所要UV露光量と搬送速度によって決まる
写真2.卓上型の両面照射UVオゾン装置。
携帯電話、パソコンやデジタルカメラのプラスチックで作られるケースや小物部品はメッキで装飾される。
無電解メッキのエッチング工程では今もクロム酸混液処理が主に使われる。
これら電子製品主要部は、LSIを搭載したPCBの演算部やHDDなどの記録媒体、それらをつなぐフレキシブルケーブル(FPC)で構成されている。
 微細化の進む演算部、記録媒体やFPCの製造には、クロム酸混液の類のアンカー効果に依存する技術は障害となる。
然るにLSIを除いたデバイスの製造には、コストの面から代替え技術も電解、無電解メッキの湿式プロセスであることが求められる。
その要求を満足する技術として、UV照射法が浮かび上っている。
ナノメートルの次世代技術として、UV技術を使って回路を全湿式プロセスで直接形成する研究も進んでいる。
光技術は加工対象がミリオーダーの時代には無力であったが、マイクロメートルの時代になってようやく有用な技術と認められた。
ナノメートルの時代には更に進んで必須の技術に育つことは間違いない。

2. UVオゾン法で使われる光源

UV照射法では紫外線ランプが生成するオゾンを併用する。
オゾンは改質反応のプロセスにおいて重要な役割を果たす。
そのため最近ではUV照射法はUVオゾン法と呼ばれることが多くなった。
表面処理にはエネルギーの高い短波長UVが必要なので、光源には185nmと254nmを発光する低圧水銀ランプと172nmを発光するキセノンエキシマランプが使わる。
 代表的なUV光源の高圧水銀ランプやキセノンランプは改質には適しない。
表1に両ランプの発光波長と比較のためにエネルギーの値を示す。エキシマランプのエネルギーは高いが、光が酸素に強く吸収され、大気中では照射距離が極端に短いので注意を要する。

表1.低圧水銀ランプとXeエキシマランプの波長とエネルギーと有効照射距離

  低圧水銀ランプ Xeエキシマランプ
発光波長 (nm) 185 254 172
エネルギー (kJ/mol) 647 472 696
(eV) 6.7 4.9 7.2
大気中の有効照射距離 (mm) 0―20 0―3
大気中の臨界照射距離 (mm) 200 8

3. UVオゾンによる表面処理メカニズム

UVオゾン表面処理法には、改質と洗浄の効果がある。
どちらの反応が起こるかは素材に依存し、ガラスやセラミックには洗浄作用だけが働き、プラスチックや金属には改質と洗浄の両方が働く。
 照射するUV光のエネルギーが有機化合物の分子結合エネルギーより高い時、分子結合が切れる確率が高くなる。
240nm以下の波長のUVは酸素を分解するので、172nmと185nm線は酸素からオゾンを生成する。
254nmはmsの速さでオゾンを分解して、高いエネルギーの活性酸素を生成する。
C-H結合が切れるとH原子は軽いので直ぐに引抜かれる。
活性酸素はその有機化合物と反応して、COやCO(OH)などの酸素に富んだ官能基を表面に形成する。
図1は低圧水銀ランプ(セン特殊光源製、形式:EUV200W)を3分間照射したときの液晶ポリマー(LCP)表面のC1SXPS(X線光電子分光法)スペクトルである。
 照射によりC-H結合に基づくピークが減少して、カルボニル基に起因するピークが新たに発現し、カルボキシル基に基づくピークが増大する。
富酸素ラジカルには極性があり、表面エネルギーを増加させ親水性を高め、親水性に依存する接着力を強くする。

4. UVオゾン法と他の技術の性能比較

UVオゾン法の効果は素材により異なる。
一般的に接着が困難なエンジニアリング・プラスチックに高い効果を示すが、フッ素樹脂やポリアセタールには効果がない。
 現在実用化されているUV照射法の9分9厘は単純なUVオゾン法であるが、それで効果がない場合は光増感により効果を高める方法もある。 
その一つにLCPに増感剤としてヒドラジン水溶液を塗布して、その上から200Wの低圧水銀ランプを120秒照射して、重合性ビニルモノマーをグラフト重合させる方法が発表されている。
光増感法の効果と単純UVオゾン法並びにプラズマ法の効果を詳しく比較されているので、その結果を図2に紹介する。
一般にはプラズマ法は紫外線より強いと言われているが、ここでは逆に光増感法はプラズマ法をやや上回る効果を示している。
 同じ技術でも接着の形態によって効果に違いがあるので、改質技術を選択する時は事前によく調査する必要がある。
銅箔の接着力に限れば、単純UVオゾン法もチッソ雰囲気プラズマや光増感法と同等の効果があるが、無電解メッキやスパッタ銅の接着効果は劣っている。
封止樹脂の場合には、UVオゾン法は酸素プラズマより高い効果を見せている。

5. 微細配線における粗面の弊害

大半の表面改質法は処理面を粗面化する。
無水クロム酸混液でプラスチックを処理すると、化学的腐食により表面は数μから10μを超える不規則な微細孔で覆われる(図3-A)。
それに対しUVオゾン法は、ほとんど表面を荒らさない(図3-@)。
図3.PIフィルム表面のSEM像
   @ UVオゾン処理の表面 
   A 無水クロム酸混液処理の表面
 無水クロム酸混液処理は、図に示す腐食粗面のアンカーが接着力の基になるが、配線が微細化され配線パターンのラインスペース(L/S)が10μmを下回ると、現在主流のサブトラクティブ法においては、銅張フィルム基材のエッチング面のCu残渣が増大し、配線パターンのファイン化に様々な障害が起こる。
 同様に電子素子の高速化が数GHzを越えると、配線の粗面は高周波特性を乱す。
この両面から平滑な表面が求められ、平滑でありながら接着力を高くするUVオゾン処理が注目される。

6-1. LCP基板の枚葉処理装置

PIとLCPはフィルム基板の素材として優れた特性を示すので、高密度実装に益々その採用が増えている。
LCPフィルムを素材とするフレキシブル多層プリント回路基板を、枚葉式で改質する装置を写真3に示す。
光源は低圧水銀ランプである。
写真3.枚葉式UVオゾン基板フィルム処理装置。
手前でフィルム装填、奥で照射する。

6-2. FPC用PIフィルムの改質

銅張ポリイミド基板は、一例としてフィルム表面にNiやCrをスパッタリングで下地を形成し、その上に無電解メッキと電気メッキを重ねる方法や、銅箔に接着剤又は無接着剤でラミネートする方法で作られる。
 しかしフィルムの改質にはスピードが求められるため、これまではコロナ放電処理が主流であった。
コロナ処理の効果は酸化反応による官能基の生成であるが、コロナ放電は大気中の高圧放電なので、雷のような放電ストリークの束で構成されている。
 一本一本の放電ストリークはフィルム表面に微細な熱的衝撃を与えるので、フィルム面は粗面化する。
この粗面が高密度回路に使われる基板の場合は障害となる。
一方、UVオゾン法はコロナ法に比べ処理に10倍以上の時間を要するが、処理面は平滑なものが得られる。
そのため当社の例ではようやく2004年から高機能基板への実用化が始まった。
フィルムの搬送法は枚葉式やローラー搬送など色々のタイプが開発されている(写真4)。
写真4.ロールtoロール搬送式フィルム表面改質装置。右中央のチェーンの上が光源入口。

6-3. PCB電解メッキ前処理

PCB回路パターン面の絶縁層と配線の間隙が微細になると、絶縁層に囲まれたCuファインパターン面がメッキ液に濡れ難くなる現象がある。
 Cuパターンの一部がメッキ液に濡れなければ、その部分は電解メッキ出来ず不良品になる。
UVオゾン処理はCuなどの導体表面を平滑に保ったまま濡れ性を高めるので、良質のファインパターンが形成できる。
このプロセスを加えて高機能PCBが歩留まり良く製造出来るようになった。
この用途も2004年から実用化が始まったばかりである(写真5)。
写真5.
UVオゾン式高密度PCB電解メッキ前処理装置
型名:PM2006R-5

7.おわりに

高機能化した製品の微細化が進んで、配線回路のL/Sが10μmを下回る時代に入って、アンカー効果に頼る改質技術は機能不全に陥っている。
 当社の経験ではUV照射の改質技術は1990年代に入って実用化が進んだが、これまではマイナーな存在であった。
ここに来てUVオゾン法はようやく真価を発揮する時代を迎え、次世代の技術研究も広がっている。
 UVオゾン法は洗浄効果も併せ持ち、それによる製品歩留り向上の貢献もあるので、先端技術のものづくりに生かされることを期待する。
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